ベトナム旅行記

Yukiko.T

   厚手のコートを着ようかと思い始めた十二月の半ば、私は友人と二人でベトナムへ旅行した。11カ国目の海外旅行である。
辛い物が苦手な私にとってベトナムは今まで遠い国であった。友人と旅行先を検討していたある日、山ほど集めたパンフレットを見ていた私は突然『生春巻きが食べたい!』。それからトントン拍子に旅行の日程は決まったのであった。


1日目
 
   午前11時に関西空港を出発。機内でアオザイを着たスチュワーデス姿からベトナムムードが漂っていた。彼らの話す英語はとても聞き取りにくかった。英会話の堪能な友人ですら何度も聞き直していたほど。6時間のフライト後の午後3時にベトナムのホーチミンに到着。空港を降り立った友人の第一声は『地獄の黙示録だ』…なんだか草の茂みから迷彩服姿のベトナム兵が機関銃を背負って地面を這ってそうなそんな感じだった。空港からは迎えの車が来ていたので30分ほどでホテルに到着。
   二人の役割分担は特許事務所の海外部門に勤める友人が通訳、会計事務所に勤める私が会計係を引き受けることになった。そして初っ端なから私はドジを踏んでしまった。その日は旅の疲れもあって夕食は近くのレストランですませようという事になった。ホテルからタクシーで行ったのだが10分程の距離で料金は約3万7千ドンだった。タクシーのメーターがわかり辛いのと初めてのベトナム通貨「ドン」に慣れないのとで私が40万ドンを渡したら若い運転手にびっくりされてしまった。正直な運転手さんだったようで慌てて10万ドン紙幣4枚を返してくれた代わりに1万ドン紙幣を数枚私の手から引っこ抜いた。次に乗ったタクシーでもやはりメーターの読み方がわからず、3万5千ドンを支払うのに5万5千ドンを支払ったら、言葉が通じないのと緊張とで2万ドンのおつりをもらい損ねてしまったのだ。日本円にしたらたかたが160円ほどだが、彼にとって2万ドンはきっと1600円くらいの価値なのだろうと思うととても悔しかった。その失敗のおかげでドンに慣れることができたのだが・・・
 
   レストラン【Le Caprice】はかなり高級なフランス料理だった。お給仕さんは私達二人の客に対して3人もいてそれぞれ役割が違い、ワインを注ぐ係、椅子を引く係、胡椒係(70pくらいの細長い筒の様な入れ物を肩から担いで『胡椒?胡椒?』と料理が運ばれる度に聞いてくる)と皆サービス精神たっぷりでちょっと王様気分を味わえた。ワインを2杯飲みほろ酔い気分で料理を堪能した私は最後のデザートを口にした途端気分が悪くなってきた。頭がガンガンしてきて、今まで食べた物が上へあがってきた瞬間、トイレへ駆け込んだ。まさか料理にあたった…!?
しばらくトイレにこもって休んだら落ち着いた。よかった、ただの食べ過ぎじゃん(笑)その夜は満腹でベッドへ入った。


2日目

   昨日の食べ過ぎで胃拡張になったらしい。空腹で目が覚めた。朝食はホテルのバイキングだ。2日目はボディマッサージを予定していたので食べ過ぎては苦しくなると思い、朝食は控え目にとることにした。なのにレストランに入ったとたんその決意は揺らいだ。和・洋・中おまけにベトナム料理まであり、どれもこれも美味しそうな物ばかり。特に南国のフルーツがたくさんあって、私はその中のドラゴンフルーツにはまってしまった。外側はピンクで内側は白く中に黒い種がいっぱいあって見た目はちょっとグロテスクだが、口にしたら結構あっさりして美味。又もや満腹になってしまった。日頃の疲れを取ろうと臨んだマッサージはまるで天国。エステティシャンは小柄なベトナム人だったが結構力強くて、背中の押し加減も丁度いい感じ。時折片言の日本語で『痛い?気持ちいい?』と話しかけてくる。(気持ちいいよ、お願いだから黙ってて)

   フェイシャルエステとボディマッサージでたっぷり2時間半費やした後、ショッピングへと出かけた。場所はドンコイ通、ホーチミンで一番賑やかなメインストリートだ。この通りのお店はおそらく観光客向けのお店なのだろう。値段が少々高めである。でも縫製がしっかりしていて品物はなかなかよろしい。刺繍のきれいな巾着やサンダル、湯のみなど友人と共に買いあさってしまった。両手にショッピング袋をいっぱい抱えて。それでも全部で5千円もしなかった。なんと物価が安いのだろう。朝食を食べ過ぎたせいで遅めの昼食をとることにした。今度はハンバーガー。ハードロックカフェやマクドナルドのハンバーガーとは違うぞ。ふわふわのパンの中に分厚くてジューシーなハンバーグが入っている。それをお上品にフォークとナイフで食べた。uh、delicious!! そういえば街中で一軒もマクドナルドを見なかったな〜(カーネルおじさんはいたけど)。どうかアメリカ企業よ、ベトナムへは進出しないでおくれ。(日本企業の看板はあちこちで見た)それからベトナムのコーヒーは酸味が少なくてとても美味しい。何種類か買って帰り自宅でベトナムを懐かしみながら飲んでいる。

  夜までしっかりとショッピングを楽しんだ後、ホテルへ帰り夕食はベトナム料理を食べた。待ちに待った生春巻きだ。中の具はいろいろあるらしいが、私達が食べたのはえびとニラと香草が入っていた。テーブルの脇にはニョクマムと唐辛子のようなソースが置いてある。ベトナムでは何にでもこのニョクマムを入れるらしいが、結局私は全然このニョクマムを口にすることがなかった。ちょっと残念。生春巻きに添えてレタスのような物と小さく刻んだ赤い野菜が目についた。プチトマトだと思って食べた瞬間、口の中から火が出そうになった。唇はしびれてまるでオバケのQちゃん。赤唐辛子だったのだ。だから辛いのは苦手なんだよ〜、赤いものは要注意だ。次に出てきたのはベトナムの代表的な料理、フォー。お米から作ったという、うどんとソーメンの間のようなこの麺の中には牛肉やいろんな野菜が入っていてとてもヘルシーな食べ物だった。そーいえば、ベトナム人は太ってる人がいない。しかもハゲもいない。食文化のせいだろうか。うらやましい。ベトナム料理も堪能した私達は部屋へ戻ると買い物疲れか即ベッドへ入った。
喰っちゃ寝ばかり。


3日目
   今日はアロママッサージと足つぼマッサージ。
今回の旅行の趣旨はエステ&マッサージと決めていたのでたっぷり揉み解してもらうのだ。昨日のお姉さんとは違うが今日も小柄なベトナム人。大丈夫?こんな細い体で…と思っていると結構押してくるよ。そんなに強く押したら後日揉み返しが来るんだからね、そっとね。なんて心でつぶやきながら、良い気持ちであった。

   午後からはオプショナルツアーを申し込んでホーチミン市内を回った。まずは統一教会。南ベトナム政権の大統領官邸だったこの建物はベトナム戦争時代の軍事施設だったらしく、当時の応接室や作戦会議室、ヘリポートなどが見学できる。中には小さな映画館もあった。それから戦争証跡博物館に行った。ここには1964〜75年のベトナム戦争、1968年のソンミ虐殺事件、1979年の中越戦争について写真やイラストが置いてある。屋外には本物のアメリカ軍の戦車や軍用機・爆弾の展示がしていた。次に聖母マリア教会、続いて中央郵便局。郵便局に入ってまず目に飛び込んだのは正面に飾られているホーチミンの肖像画だ。ふ〜ん、ホーチミンて人の名前だったのね、知らなかったわ。そういえばベトナム紙幣にはホーおじさんが印刷されていたっけ…
次にベンタイン市場へ行った。市場には生活雑貨から食料品、動物の餌などあらゆる物が売られていた。市場の中では皆なかなかの商売上手で、友人が買い物をしていて値段の交渉中、横で待っていた私に向かってまだ10代であろうその売り子は『お姉さん、かわいいねぇ』などといって何か買わそうと親しげに話しかけてくる。私もすかさず『ありがとう、あなたもかわいいわよ』といって逃げる。負けてはいられない。
最後に小さなブティックのようなお店に連れて行かれた。ガイドと契約しているんだろうな、と思いながら入った店にはところ狭しと小物から洋服、アオザイまで置いてあった。そこでもまた私は小さなピアスと皮製のブレス、木で作ったサンダル、日本では絶対に買わないであろうブラウスなどなど、ごちゃごちゃと山のように買ってしまったのだ。これも旅の思い出よね。土産物でいっぱいになった重いスーツケースを引きながら日本へと帰った。

3泊4日の慌しい旅だったけど、暑くて美味しい国ベトナムへ絶対また行くぞ!

(終)



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